Dr.LOUPE Blog_

ドクタールーペスタッフ、ルーペちゃんがお届けする健康と生活にまつわるブログ

「日本の長寿村・短命村」に学ぶこと

こんにちは、ひとりのお昼ご飯では、インスタントラーメンを小鍋で作ってそのまま食べるルーペちゃんです。
買ってきたパンの紙袋を裂いて広げてそのままお皿にしたり、冷凍ご飯を温めたらその容器のままおかずをご飯の上に乗っけたり。
自分だけのために作るのはまだいいとして、洗い物まで増やす気はなーい、というお母ちゃんあるある。

●今だからこそ、読みたい

2014年、ルーペちゃんが選ぶ「この本がすごい」第一位の本を今日はご紹介します。何というか、今読んでも、というか今だからこそ新鮮に感じる本です。
年末年始の暴飲暴食に向かっていよいよアップを始めた様子のみなさんにも今ぜひ読んでほしい。

その本は東北大学名誉教授・医学博士の近藤正二先生の著書「日本の長寿村・短命村」(サンロード出版)。

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表紙の写真は近藤先生ご自身

初版は1972年の超ロングセラー。当時と食生活が大きく異なる今、なぜ私はこの本を薦めるのでしょう。

●長寿と短命の違いが生まれるわけ

近藤先生は長生きか短命かを決めるのに平均寿命ではなく、70歳以上の長寿者率が重要と考えました。その長寿者率の高いところを「長寿村」低いところを「短命村」と定義して、何がその違いを生むのか、全国を調べて周りました。

食生活以外の要因、たとえば酒をよく飲むとか、労働が厳しいとか、気候が厳しいとか、そういったものも合わせて調べましたが決め手にはならなかったそうです。酒をよく飲むという共通点があっても、長寿村もあれば短命村もある。また隣り合った近隣の村であっても長寿と短命の違いが生まれる。
何が違うかといえば、食べているものが違うのです。

●栄養素についての解説はひとこともない

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近藤先生は昭和2年からこの研究を始め、交通の不便な戦前の時代から36年かけて、全国津々浦々990町村を歩き回り、「こういう食生活の人たちにはこういう結果が起きています」ということを我々に教えてくださっています。

にんじんやかぼちゃを多食している、海藻が毎日食卓に上る、といった事実に基づく観察の記述はあるけれども、「にんじんかぼちゃに含まれるカロテンが長生きに効く!」「海藻に含まれるヨウ素や食物繊維が体に良い!」といった類推は一切ありません

「◯◯を食べれば」「◯◯をすれば」という単純で短絡的な健康情報を見慣れた私たちには、非常に誠実で清廉な姿勢に思えます。近藤先生の、人間の体や食材に対する畏敬の念を強く感じるのです。
人間があれがいいこれがいいと単純に決め付けていいものではない、我々が計り知れない様々な要因が絡み合ってその現象が起こっているのだ、という謙虚さは昨今の流れては消える健康情報に振り回される私たちに何事かを考えさせてくれるものです。

●「物事は机上で考えて、結論を出してはなりません」

この本にはひとつの学説も登場しません。書いてあることはすべて近藤先生が実際に現地に行って見聞きしたことだけです。事実はどんな机上の学説よりも強い主張です。疑う余地はありません。
上の見出しの言葉はこの本の最後の方で近藤先生が言っておられますが、これだけ徹底的に調べ尽くした人だからこそ、言える言葉です。

口述形式で書かれているので読みやすいなぁと思っていたら、お弟子さんが近藤先生のお話を聞き書きしてまとめたものなのだそうです。それまで近藤先生は研究の内容を一切印刷物にすることはなかったんだとか。

●米を多食する村は短命村

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一升メシを伝統とする村は短命村」とバッサリ断言されています。分かっていてもこうまではっきり言われるともう逃げ場がありません。白米を大食することに無上の喜びを感じるルーペちゃんも、もう知らぬふりはできません。何しろこういう食事をしている村は「みんな40歳頃から脳溢血で倒れ」るそうですから。

米どころであっても「米は売るために作っている。普段は食べない」という村は長寿村です。特に鳥取県の高麗村のエピソードは興味深く読みました。

そこは昔からの米どころであるのに米は決まった日にしか食べないという長寿村で、なぜそうなっているかは「昔からの決まりだから」としかわからなかったそう。近藤先生が「きっとそういうことを決めた指導者がいるはずだ」と言って調べてみるとたしかに、明治の頃の村長が『麦と芋を主食にし、米は1年の決まった日にしか食べてはならない』と規則で定めたことがわかりました。米を食べてもいい日は1年に10日ほどしかなく、その規則によって村民の長寿が守られたのだろうと近藤先生はおっしゃっています。

米を食べてもいい日が1年に10日!正月三が日に餅を食べるとすると、ほぼ2ヶ月に1回。他の日にパンやパスタを食べていいってわけじゃないですしね。おやつやケーキもダメですしね。
・・・考えると頭をかきむしって叫びだしたくなるので、とりあえず先に進みましょう。

●野菜(特に大豆・にんじん・かぼちゃ)を多食する村は長寿村

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田んぼばかりで畑を作らない村は短命村だそうです。特ににんじんとかぼちゃが重要とのこと。

ちなみに「果物は野菜の代わりにはならない」そうです。津軽のりんごの産地では「りんごをたくさん食べているから野菜は食べなくてもいい」という食生活で、みな短命村だったそうです。

●海藻を多食する村は長寿村

長野県に大豆の産地で有名な地域があり、そこは新潟の海藻と大豆を物々交換しているのだそうです。大豆と海藻を多食するので当然ながら長寿村なのでした。

●近藤先生ご自身は何を食べていたか

遠くに調査に出かけるときでも三食手弁当で過ごされていたそうです。また研究室では手料理を作られていたとか。メニューは毎日同じ。

・パン1枚を2分しマーガリンを塗ってチーズを挟む
・にんじんおろし、かぼちゃの煮つけ、煮豆、缶詰サバ水煮1切れ、銀だら煮付1切れ、青い野菜の天ぷら、牛乳1本(手に入れば豆乳)
・とろろ昆布の吸い物

にんじんおろしはその場で手製なさるので、調査で遠征される場合は必ずリュックにおろし金が入っていたとのこと。

近藤先生ご自身は昭和52年に85歳で急逝されたそうで、急逝というからにはおそらく死の直前までお元気でいらしたのでしょう。納得の食生活です。

●現代の私たちが考えるべきこと

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何しろ昔のことですから、「肉」「乳製品」「油」「砂糖」を多食する人はこの本には出てきません。おそらく「肥満」と分類される人もほとんどいなかったことでしょう。それでも、改めるべき食生活はあったわけです。
そうなると 飽食の時代の私たちはどうしたらよいか。

コストコで座布団のようなピザを買い、1ダースのクロワッサンを買い、キロ単位で売っているチョコレートを買うルーペちゃんをはじめとする現代の日本人の食生活を、近藤先生は予想もされていなかったことと思います。

この本を読んで「よし、にんじんとかぼちゃ食べてれば大丈夫!」と考える人はいないとは思いますが、私たちはむしろ「何を摂るべきか」に腐心するよりも、「何を摂らざるべきか」を注意する必要があるのではないでしょうか。

「摂らざるべき、でも美味しいもの」に囲まれている現代の我々は、それらが存在しなかった昔の人よりも、より困難な時代に生きているのかもしれません。

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