Dr.LOUPE Blog_

ドクタールーペスタッフ、ルーペちゃんがお届けする健康と生活にまつわるブログ

バレンタインデーには愛について考えよう

こんにちは、娘が配る友チョコ作りの手伝いをしていたらこんな時間になってしまったルーペちゃんです。
なんといっても友チョコのキモはラッピング。年末からカワイイ袋やワックスペーパーを見つけては準備していたのでした。
今年は14日が土曜だからバレンタインやらなくて済むぞ∩(゚∀゚∩)と思っていたらまさかの保護者参観日で。
神様ってときどきこういうことするよねー。

楽しいバレンタインデーなのでにぎやかに楽しい話題を、と思ったのですが、
ふとある人たちのことを思い出したので、その人達の話をしたいと思います。

仲が良い夫婦のことを「比翼の鳥」と言いますが、彼らはまるでつがいの文鳥のようでした。
ちょこまかとよく動き、肩寄せ合って歩き、いつも楽しそうにさえずりあっていました。

私たち夫婦が新婚生活を始めたのは恵比寿でした。その頃の恵比寿は今よりはまだ下町の匂いを残していて、印刷工場や倉庫、銭湯に商店街の個人商店など、町の余白と呼ぶべきものがたくさんありました。
その中におじさんとおばさんの食堂がありました。
車一台しか通れないような狭い商店街にある木造の店舗兼住宅のその食堂は、おじさんとおじさんの父親が自分たちで建てたものだとだいぶ後から聞きました。

おじさんが調理して、おばさんが給仕。
壁には手書きの品書きが画鋲で貼ってあって、床は土間にコンクリを敷いてありました。
丸いビニールの座面のスツールを引くと、床にこすれて脚がギィーといいました。
夫が独身時代から世話になっていたその食堂に、私もいつしか通うようになりました。
どんなおかずでも日替わり定食は500円ポッキリ。
特別に素晴らしい味でも量が多いわけでもなく、ごく普通の、でも真面目に作られたまっとうなご飯でした。

いつ行ってもおじさんもおばさんもニコニコしていて、どんなお客さんも心から嬉しそうに迎えていました。
仕事が一段落つくと近所の人たちが集まって、おじさんもおばさんも客席に座ってひとしきり世間話。
生まれも育ちも恵比寿だというおじさんの昔話はことに興味深く、
「バス通りに都電が走っててね」
「目黒川を船で下って東京湾まで出た」
など当時の様子を詳細に話してくれました。
私はほとんど忘れてしまったので、これを聞き書きしていたらさぞ面白いネタになっただろうといまさらながら思います。

何年かして、事情があっておじさんはその土地を手放すことになりました。
その頃すでに70も半ばだったので、もう十分に働いたというべきですが、親の代から守ってきた土地を手放すことに、おじさん世代の人ならば特に忸怩たる思いがあったことでしょう。
都心のマンションに二人で移り住み、引退生活を送ることになりました。
その頃には私たちとおじさん夫婦は、互いの家を行き来し、一緒に遠出したりするほど仲良くなっていました。
親とも祖父母とも違う、年の離れた友達というのがなんとも新鮮で面白いものでした。
彼らは一切教訓めいた話も説教もしません。ああしろこうしろと指図もしません。
東京の人の絶妙な距離感なのか、他人ゆえの遠慮なのか分かりませんがそれが居心地よく、ふと思いついては会いに行こうと思わせる要因でした。

彼らはお互いに対しても、当てこすったり不満を述べたりが一切ありませんでした。
あの年齢の人たちにしては珍しいように思いますが、とにかくお互いを褒めまくるのです。
おじさんが「うちのお母さんは朗らかだから人が寄ってくるんだよ」と言えば、
おばさんが「うちのお父さんすごいのよ、何でもできるのよ、こないだもねこれをね・・・」と続けます。
おじさんが、おばさんの書の作品を持ちだして、先生に褒められたんだよと自慢すれば、
おばさんはおじさんのボーリングのアベレージ表を持ちだしてすごいでしょ、と自慢。
お互いについての二人の話はいつまでも終わりませんでした。

50年以上連れ添ってもまだパートナーのことをこんなに自慢できる夫婦、見たことがありませんでした。
口癖が「おばさん幸せだわ~」だったおばさんは、去年の秋にガンが再発して亡くなりました。
そういえばずいぶん会ってないな、そろそろ会いに行こう、と思っていた矢先でした。
去年おばさんからもらった最後の年賀状には「何時も忘れたことないよ、待ってます」と書いてありました。
私も何時も忘れたことなかったのに、どうして生きているうちに会いに行かなかったのか。
年寄りがいつまでも元気でいてくれるなんて、若い者の傲慢なのだと思い知りました。

年末、お線香を上げに久しぶりにおじさんの家に伺いました。
「毎日何したらいいかわかんなくてね」とつぶやくおじさんに案内されてご仏前に向かうと、一枚の葉書が供えてありました。
おばさんが亡くなって数日後に届いたという、同じ病室だった女の子から届いた葉書でした。
「手術を怖がっていた私を、『おばあちゃんの元気あげるから頑張って!』と抱きしめてくれた。感謝しています。元気になったら会いに行きます」という内容のものでした。
自分が死にかけているのに「元気あげるから」と笑ってみせるおばさんを思うと、胸に詰まるものがありました。

私は「愛」と聞くと真っ先にこのご夫婦の姿を思い出すのです。
家族のあり方、夫婦のあり方、そして人間としてのあり方。多くをこのご夫婦に見せていただきました。

楽しいバレンタインデーに、ご家族のことやパートナーのことについて、みなさんが少しでも考える時間を作ってくだされば幸いです。
Happy Valentine’s Day!